愛着障害とは?
愛着障害とは、幼少期に養育者(主に母親)との愛着形成が何らかの理由で形成されず、
情緒や対人関係に問題が生じる状態のことを指します。
愛着(アタッチメント)とは、養育者と子どもとの間に情緒的なきずなが育まれていくことで、
愛着をきずくことは
「人間を信頼できるようになる」
「コミュニケーション能力が高まる」
「心理的な安心感を得る」
などの効果があると言われています。
幼い頃に親との関係で安定した愛着を築けないことで起こる愛着障害は、子供の時だけでなく大人になった後も、心身の不調や対人関係の困難、生きづらさとなってその人苦しみ続けることがあります。
愛着とは、母親との関係によって、その基礎が作られる絆だがそれは他の人との関係に適用され、また修正されていく。愛着は対人関係の土台となるだけではなく安心感の土台となってその人を守っている。
愛着障害の克服「愛着アプローチ」で、人は変われる 岡田尊司
光文社新書 はじめにより
また、大人の発達障害の問題の背景には、幼少期の愛着の問題が関係しています。
「愛着を土台に、その後の情緒的、認知的、行動的、社会的発達が進んでいくからであり、その土台の部分が不安定だと、発達にも影響が出ることになる。愛着障害が発達障害と見誤られてしまうのも、一つにはそこに原因がある。」
「発達障害と呼ばないで」 岡田尊司
幻冬舎新書 より
子どもの愛着障害の特徴
個人差がありますが、子どもの愛着障害の特徴には以下の様な特徴があります。
・理由もなく怯える、落ち込む、イライラする
・よく眠れない、食欲がない
・身体が平均より小さい(体重が軽い、身長が小さい)
・風邪をひきやすい、胃腸が弱いなど、体調を崩しがちの傾向がある
・嘘をつく、謝れない
・モノや人を噛んだり叩いたりする
・発達障害のある子どもに似た言動をする場合がある(言葉が出ない、常同行動、多動、片づけられない、危険な行動に出る、モノに執着する、季節感に合わない服を着たがるなど)
・自分を傷つけるような行動に出る場合がある(頭を壁に打ちつける、身体をかきむしる、髪を抜く、爪をかじる、リストカットなど)
・大人の反応を試すような行動に出る(わざと悪いことをする、痛みを大げさにアピールするなど)
・自己評価(自己肯定感)が低い、ネガティブ思考(挑戦したがらない、失敗するとパニックを起こす、「どうせ私なんて」などの言葉が多い)
大人の愛着障害の特徴
個人差がありますが、大人の愛着障害の特徴には以下の様な特徴があります。
・ちょっとしたことで傷つきやすい
・安定した人間関係を築くことに不器用さがある。折り合いをつけることができない。結
果的に仕事やプライベートでトラブルを抱えやすい
・人との適切な距離感がわからない
・「全か無か」の思考になりやすい。「好き」か「嫌い」か、「ある」か「ない」かの
2択しかない
・感情のコントロールが苦手
・怒ると建設的な話し合いができない
・過去の失敗や恐怖をいつまでも引きずってしまう
・精神疾患を発症しやすい。発症した場合、重くなったり長引いたりしやすい
・自分を肯定的に見ることが苦手(自己肯定感が低い)、ネガティブ思考
・自分をさらけ出すことに臆病
・人と交わることを心から楽しめない
・恋人、配偶者、自分の子どもの愛し方が分からない
・微熱や胃腸の症状が続く。疲れやすい等、自律神経系のアンバランスがある
・自分の生理的欲求(空腹など)がわかりにくいことがある
・発達障害と似た症状がみられることがある
4つの愛着スタイル
愛着のスタイルには以下の4つがあります。安定型と不安定型が存在し、
不安定型はさらに「不安型」「回避(拒絶)型」「無秩序/無方向型」の3つに分類されます。
・安定型(自律/安定型)
・不安型(とらわれ型/アンビバレント型)
・回避/拒絶型(愛着軽視型)
・無秩序/無方向型(未解決型 or おそれ/回避型)
不安型(とらわれ型/アンビバレント型)の特徴
・いつも人に気を遣うので疲れやすい
・職場の上司や同僚だけではなく、自分の恋人や家族に対してまで相手の顔色を異常に気にしてしまう
・自己アピールが上手くできず、本心を抑えて人に合わせてしまう
・また、そういう自分に自己嫌悪感を持っていて、相手の反応をつい悪い方に取ってしまいがちになってしまう
・人に嫌われたくない、人に受け入れてもらいたいという欲求が強い。気遣いし過ぎてしまう。さらに、相手にも同じ位の気遣いを求めて空回りすることもある。
・強く相手を求めているのに、拒絶されるのが怖いために相手を逆に拒絶してしまうこともある
アンビバレントとは「二律背反」という意味で母親から離されると強い不安を示し、
激しく泣いたりするのに、母親と再開すると抱かれるのを拒んだり抵抗したりします。
しかしながら、一度くっつくと今度はなかなか離れようとしないなど、
愛着行動が過剰に引き起こされる愛着パターンで、
子供のうち10%がこの愛着パターンを示します。
親の子供への関心にムラがある場合や、過干渉な親の場合に
不安型の愛着パターンを示すことが多いとされています。
※また、成長すると不安障害や不登校につながることが多いのも特徴です。
回避/拒絶型(愛着軽視型)の特徴
・距離を置いた対人関係を好み、親密さは重みに感じる。
・縛られたくないので人に依存もしないかわりに人から依存されることを迷惑と感じる
・仲間と一緒にいても否定的な意見が多く、自分に責任がかかることを避けようとする
・人とぶつかることが嫌いで、一歩引いて衝突を避けることが多いのに、人の気持ちに無頓着なため、急に攻撃的になって相手を傷つけてしまうこともある
・人に悩みを相談されたとしても、共感ができないため、関心がないように見えてしまう
回避型愛着パターンは、母親と離されてもほぼ無反応で、
・再開しても目を合わせない
・自分から抱かれようとしない
等の特徴があります。
ストレスを感じても愛着行動を起こさないタイプで
15%程度がこの愛着パターンを示します。
幼い頃から児童養護施設で育った子供や、
養育者(親)があまり世話をせずに放任している場合に見られます。
回避型愛着パターンの子供は、成長するにつれて
反抗的な態度をとったり攻撃性が問題になることが多いです。
無秩序/無方向型(未解決型 or おそれ/回避型)
無秩序型/無方向型愛着パターンは、不安型と回避/拒絶型が入り混じったような、
一貫性のない無秩序な行動パターンを示します。
母親と再開しても全く無反応だったり、激しく泣いたり暴れたりします。
他には、母親に対して怯えるような反応を見せたり、
母親を急に叩いたりするケースもあります。
子供の10~15%がこの愛着パターンを示すとされ、
虐待を受けている子供や精神状態がひどく不安定な親の子供に見られやすい愛着パターンです。
親の行動が予測不能であるために、
子供の行動を無秩序なものにしていると考えられます。
※また、無秩序型愛着パターンの子供は、
境界性パーソナリティ障害になるリスクが高いとされています。
安定型
安定型愛着パターンは、母親が現れると素直に喜び、母親に抱かれようとします。
母親から離されると不安を示したり、泣いたりしますが、過剰とまではいかない程度です。
子供のうち60%がこの愛着パターンを示し、健常な発達とみなされます。
HSP/HSCと愛着障害
HSPやHSCは生まれつきの神経系の特性から愛着障害の問題を生じやすいことが分かっています。
「人の顔色が気になる」
「人からの言葉に傷つきやすい」
「過度に人を恐れる」
など、上記特徴はHSPやHSCの特徴ではなく、
愛着障害やトラウマの問題から生じることが多く
HSPチェックリストの中には、間違った問いが載せられているものも多く見かけます。
愛着障害の改善に関わる自律神経
愛着障害に関係する神経は腹側迷走神経で、養育者との関係によって、
この腹側迷走神経が育まれていきます。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、
副交感神経がさらに背側迷走神経と腹側迷走神経に分かれます。
腹側迷走神経はポリヴェーガル理論の基、最近発見された神経で、
正式に医学では存在を認められていない様ですが、
様々な病気や社会問題の根本の原因としても
とても重要な神経であることは間違いないと考えられます。
腹側迷走神経は、下記の様にアクセルとブレーキの神経を調整する神経で
とても大切な役割を担っています。
・交感神経・・・・・・・・・・・アクセルの神経
・副交感神経(背側迷走神経)・・ブレーキの神経
・副交感神経(腹側迷走神経)・・アクセルとブレーキを調整する神経
愛着障害を克服するために
腹側迷走神経(愛着)は何歳からでも育くむことは可能です。
神経を育むための土台となる
「安心できる場所(人)⇒安全基地となるもの」
の存在が必要不可欠であることと、
同時に身体へアプローチをして神経系にアプローチしていくことが大切です。
個々により生育環境などが異なるため、
具体的に回復するまでの期間をはっきりさせることが出来ないのが現状ですが、
期間としてはおおよそ半年~1、2年間。
時間をかけて徐々に腹側迷走神経を育み、心身の調子を整えていきます。
身体へのアプローチ
愛着障害から生じる問題は身体にアプローチをして、科学的に回復させることが可能です。
【不安・イライラがスッと消え去る「安心のタネ」の育て方 ポリヴェーガル理論の第一人者が教える47のコツ】の本に中には、誰でも簡単にできるエクササイズ(ワーク)が沢山掲載されていますので、ぜひ試してみてください。
各書籍にあるエクササイズをご覧いただくと想像がつくかと思いますが、
自律神経は以下を代表として身体の各器官と密接につながっています。
・目線
・手の指(手のひら)
・呼吸
・腸(お腹)
こちらのホームページにも書籍に掲載されている以外の方法を載せていますので、ぜひ参考になさってください。
※また、自律神経系の回復を妨げる要因が世の中には山ほど溢れていますので、
このサイトに掲載されている情報を活用しながら、少しずつ取り組まれていくことをおススメします。
自分を知り、自分だけの扉をひらく『ライフチェンジアカデミー』
LINE公式の登録はこちらから